オフィスの移転や縮小、レイアウト変更を検討する際、什器や人員配置に意識が向きがちですが、 実は見落とされやすいのがオフィス床にかかるコストです。 床は一度施工すると日常業務に溶け込み、「すでに払ったもの」として意識されなくなります。 しかし退去や原状回復の段階で、その費用が一気に顕在化するケースは少なくありません。 本記事では、法人利用を前提に、オフィス床の埋没コストという視点から、 移転・退去時に注意すべきポイントと考え方を整理します。
オフィス床の「埋没コスト」とは何か
埋没コストとは、すでに支出しており、将来の意思決定では回収できない費用を指します。 オフィス床においては、次のような支出が該当します。
- 入居時に施工したタイルカーペットや長尺シートの材料費・施工費
- OAフロア(二重床)や床下配線工事の設置費用
- 防音・耐荷重など仕様を上げるための追加工事費
これらは一度支払うと、途中で回収することはできません。 にもかかわらず、「せっかくお金をかけたから」という理由で、 移転や縮小の判断が遅れてしまうことがあります。
床のコストが問題になりやすいタイミング
床の埋没コストが表面化するのは、日常業務ではなく、 主に退去・移転・原状回復のタイミングです。
- 什器を撤去したら、床の色ムラや劣化が想像以上に目立った
- 原状回復で全面貼替えが必要になり、想定外の費用が発生した
- 床工事の工期が延び、退去スケジュールに影響が出た
特に長期間使用してきたオフィスほど、床の傷みは蓄積しています。 日常的には問題なく見えていても、最後の段階で大きな負担となることがあります。
「床を使い切る」発想が判断を難しくする
床にコストをかけていると、「まだ使えるのに移転するのはもったいない」 と感じるのは自然なことです。
しかし、埋没コストは過去の支出であり、 これからの意思決定では切り離して考える必要があります。 重要なのは、今後発生するコストやリスクです。
- 原状回復費用はいくらかかるのか
- 退去期限までに工事が終わるか
- 移転や縮小による固定費削減効果はどれくらいか
床を「使い切る」ことが、必ずしも最適な選択とは限りません。
床コストを膨らませないための実務的な考え方
床の埋没コストに振り回されないためには、 退去や移転を決めてから動くのではなく、 早い段階で床の状態を把握することが重要です。
- 什器を動かす前に、床の傷みや色差を確認しておく
- 部分補修で済むのか、全面工事が必要なのかを早めに見極める
- 床工事と什器搬出の工程を分けて考える
特に不要什器が多い場合、床の状態確認が後回しになりやすいため注意が必要です。
不要什器を外に出すことで床の負担を止める
床の劣化は、重量物が長期間置かれることで進行します。 使われていない什器や備品を社内に溜め込んでいるほど、 床への負担も増えていきます。
退去や移転を見据える場合、不要になった什器を一時的に外部へ退避させることで、 床の劣化進行を止め、工事範囲を最小限に抑えられるケースもあります。 これは床工事そのものを減らす、間接的なコスト対策です。
まとめ
オフィス床は、一度施工すると意識されにくい存在ですが、 退去・移転の局面では大きなコストとして表に出てきます。 これが「床の埋没コスト」です。
過去の床投資に引きずられるのではなく、 これから発生する費用・工期・リスクを冷静に整理することが重要です。 床の状態を早めに把握し、什器整理や保管とあわせて計画することで、 無理のない移転・退去を進めることができます。

